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君と私と(非)日常

第9章 ある朝の夜這い


朝の日差しが部屋を照らすなか、自室のソファーに座ってモノモノヤシーンで獲れたラムネを飲む。
ラムネ瓶の反射光がキラキラと室内に撒き散らされていて何とも綺麗だ。
『…………。』
しかし日差しやラムネの爽やかさとは対照的に、私はこの島に来て以来最も不愉快な気分を味わっていた。

「やぁ、おはよう希灯さん」

私のベッドで眠っていた狛枝くんがゆっくりと起き上がり、ラムネ瓶をラッパする私に笑顔を向ける。
『……他に言うことは?。』
なんて呑気な男だ。夜中に私のコテージの窓から侵入し、勝手に私の横でぐっすり眠りこけた上に起きた今ですら堂々としている。
希望のカケラが5つ埋まっているくらいには親しいとは云えこれはないだろう。まさか自分のコテージと勘違いしているのではと疑うほどだ。
「あっこの指のヤツ、希灯さんがやったの?。全然関節が曲がらないよ……」
狛枝くんが自身の両手を見つめる。
指の1本1本に割り箸を宛がい、テープでぐるぐる巻きにして固定させてある。
何をしでかすか分からないから、一応防犯として狛枝くんが眠ってる間に私が付けたものだ。
『勝手に入ってきた人が悪いよ。』
「ゴメンゴメン、だってキミがあまりにも不用心だからさぁ。こんないつコロシアイが起こるかも分からない状況で窓開けっぱなしで寝るなんて、襲われちゃっても文句言えないよ」
そんなことを言いながら狛枝くんは指に付けられた割り箸とテープを外そうと四苦八苦している。
『私が不用心なのは認めるけど、わざわざ入ってきて私の横で寝たのはどうして?。』
「そりゃあ、いつもは閉じてある筈のキミのコテージの窓が全開で、何か事件でも起きたのかと思ってつい覗いちゃった。期待していたようなことはなかったけど中でキミが下着姿で熟睡してたから、誰かに襲われたら大変だと思って見張りのために添い寝を……」
『うんありがとう。もう出てって。早く。』
コテージのドアを開き、早口で狛枝くんに促す。でも立ち上がる様子はなく、ベッドの上で留まっていた。
「……希灯さん、指のテープが外せないんだ。キミの他に外してくれそうな人もいないし、出ていくからせめてこれを取ってくれないかな?」
『はぁー……。』
溜め息を吐きながら、困った顔で両手を突き出してみせる狛枝くんに近付いた。
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