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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


『(……やっぱり、イズルくんからこっちには来てくれないよね。私ったら何を期待してるんだろう……。本当に馬鹿馬鹿しい……)。』
天気の良さを反映した濃く深い影の中から確かにカムクラの視線を感じた。
けれど近付きも声を掛けもしないのは、つまりそういうことだと判断し希灯は溜め息を吐く。
トボトボとホテルまで歩いていき、そのままコテージに戻った。
『(食欲ないな……今日はもう、レストランはいいや)。』
ナマクラ杖を部屋の隅に置き、ベッドに座る。
『あ……。』
太股の怪我を忘れていたことに気が付いた希灯がベッドシーツを見ると、すでに赤く汚れていた。
早く水で洗わないといけない。血は乾くと落ちにくいし、跡残りが酷く目立つ。
そう思いながらも、希灯はそのままベッドに横たわった。
『(めんどくさい……全部全部めんどくさい)。』
傷と同じようにシーツの汚れも、心のわだかまりも消えればいいのに。
深く考えることなく、単純に明るく振る舞っていつもみたいにニコニコ笑いながら他人に話しかければいい。
けれど今は……愛想笑いすらできる気がしなかった。
『(何でこんなに思い悩んでるんだっけ……?。あぁ、私が今までのことを負い目に感じてるからだったか……。どうせ一人相撲なんだろうけど、何だかみんなと会いたくない)。』
だるそうに溜め息を吐いて、希灯はそのまま布団の中に潜り込んだ。




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