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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


王馬がカムクラをからかおうと、さも希灯が敬遠しているように伝える。
「仮にそうだったとしても……どうでもいいです」
「へぇ、あくまでもそういう態度なんだ。まぁ別にいいけどね。オレだって希灯ちゃんとカムクラちゃんのこととかどうでもいいし」
それだけ言うと、つまらなそうに王馬は去っていった。




その頃、希灯は道路の真ん中でモノケモノと対峙していた。
『はぁ……はぁ……。』
泥試合の末なんとか倒し終え、ナマクラ杖を下ろす。
真夏のような日射しと運動のせいで額から汗が流れた。剥がれかけの絆創膏を気にしながら腕で拭うと、また歩き出す。
希灯はここ何日か自発的にモノケモノを倒している。
杖を振りすぎて両手の掌にマメができてしまっていた。元から右手にある工具類の使用でできたタコの部分とは違って痛みを感じる。
また道にモノケモノを見つけ、杖を握り直しながらじりじり近寄っていった。
『……えいッ!!。』
出会い頭に思い切り杖を振りかぶる。ぶつかる衝撃を強く感じながら、相手が動かなくなるまで殴り続けた。
『……………。』
気が済むまでボーッと過ごし、それに疲れたら八つ当たりのようにモノケモノとバトルするサイクルを3日間のうちに何度も繰り返している。
最初こそ他者への暴力に慣れず身体にロクに力が入らなかったが、今となっては弱いモノケモノなら1人で簡単に倒せるようになった。
それでも反撃は受けるもので、新しくできた太股の生傷から血が垂れ始めている。
『そろそろ、戻ろ……。』
杖をアスファルトの上でカラカラと引きずりながらホテルへと向かう。
歩いていると、遠くの木の下に誰かが座っているのを見つけた。それがカムクラだと分かった途端、希灯は思わず目を背けてしまう。
『(イズルくんだ……。話しかけに行きたいけど………でも、なんか気まずい)。』
気付いていない風を装ってカムクラの居る場所の前を横切る。道路から程々に離れている木の陰からでも、歩く人の姿くらいは分かるだろう。
確実にカムクラの視界に入っているのを感じながら、希灯はそのまま通り過ぎていく。
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