• テキストサイズ

君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


希灯はふと、一昨日に王馬とした会話を思い出す。
カムクラに恋愛感情を抱いているかどうか確認するような内容だった。
恋愛対象じゃない。ただの友達だと答えた。だってカムクライズルだから。
恋したって愛したって求めている反応が返ってくるわけがない。不毛になるだけだと分かっているから元々そういう対象として見るべきじゃない。
少なくとも、一昨日までの希灯はそれを理解しているつもりでいた。
しかし理由の分からない苛立ちは答えを見つけようと手っ取り早い可能性に向かっていく。
実は自分はカムクラに恋をしているからだと。カムクラともっとお近付きになりたいのに、成就しそうにないからイライラしているのだと。
『(そんなはずない。無理がある。あんなこと言われたから意識してしまったんだ。これはきっと勘違い)。』
今までの関係で十分満足するべきだ。
傲慢だ。厚かましい。烏滸がましい。ただでさえ周囲からカムクラに付きまとう無遠慮な人間だと思われているのに、気のない相手に今以上の友情や恋慕を求めるなんてしてはいけない。
これまでの楽しかった思い出の何もかも、自分だけが楽しかっただけなのかもしれない。振り返るとその全部が自己中心的な振る舞いだったような気がしてきて、恥ずかしくて発狂でもしてしまいそうになる。
馬鹿で間抜けで独り善がりな奴だと、もしかしたら皆は内心軽蔑しているかもしれない。
どうしよう。もう手遅れかもしれない。明日から、どんな顔でみんなに会えばいいのか……。
そんなことを考えている間に、希灯の1日はすっかりと過ぎていってしまった。



「やっほー、カムクラちゃん。何でまた1人なの? あ……さては希灯ちゃんに飽きられちゃったとか?」
木陰で休憩しているカムクラに、イタズラっぽく笑いながら王馬が話し掛けた。
「あなたには関係ないことです。確かに誉稀は3日ほど僕に会いに来てはいませんが」
「もう誰も希灯ちゃんとカムクラちゃんにちょっかい掛けてないのに、おかしいよね~。あれから希灯ちゃん誰とも遊んでないみたいだし、会いに来ないってことは希灯ちゃんはカムクラちゃんのことがつまんなくなっちゃったのかも!」
/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp