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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


『(まだ一緒に居たかったはずなのに……)。』
ドアを閉めた後、ベッドにやや乱暴に倒れ込む。
衝撃で傷が痛んだが、希灯は自分の感情の整理ができずに痛がるどころではなかった。
『おかしいな……。いつもなら「そっか」で済ませられるのに。』
枕に突っ伏して呟くも、疑問はあやふやなままだ。
カムクラから好意的な言葉をもらう方が異常なのだと分かっている。期待するだけ無駄だし、言われたところで本心であるはずがない。
カムクラの言う通り、何とも思ってないという答えが1番偽りのない言葉だ。
でもそれが気に食わない。きっと現状の関係に満足できてないからこんなにも気落ちしているんだ、と希灯は思い至る。
『私……イズルくんが私に対して無関心なとこがイヤなのかも……。』
けれど本当に無関心なら、希灯の怪我を指摘し手当てを率先して行うなどしなかったはずだ。
手当てしてもらっている最中はカムクラから確かな優しさを感じた。
『(何……?。結局イズルくんは私のことどう思ってるの……?。他の人がケガしてたら同じように手当てしてあげてたのかな?。するかもしれないし、しないかもしれない………イズルくんのこと、何も分からない……)。』
希灯は頭を抱えるようにシーツにくるまった。今まで納得したうえで接していたカムクラの無感情を今さらになって突然気にしだした自分自身にも疑問が湧いてくる。
ただ仲良くしたいだけの自分が、拒絶せずに付き合ってくれているカムクラにこれ以上何を求めているんだ?
カムクラは遊びに誘ったらいつも付いてきてくれたし競争を持ち掛けたら全力で相手をしてくれた。モノケモノに苦戦しているところを助けてくれたことだって何回もあるし、食事だって昼寝だって他の誰よりもカムクラと同じ時間を共有してきたはずだ。
希灯にとってカムクラはもったいないくらいの大事な友達だが、そう思える根拠の全てはカムクラにとって何とも思わないどうでもいいものだった……どうでもいいからこそ許容されていた、なんてオチはどうしても受け入れたくない。居ても居なくても一緒だなんてあまりにも寂しい。
『(でも、それってつまり……イズルくんにとって特別な存在になりたいってこと?。なんて言うか……あまりにも身の程知らずな願望な気がする)。』
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