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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


「わざわざ傷を増やすようなマネはしませんよ。必要もないですし」
そう言いながら下げられた服の裾をカムクラが自ら上げ直す。少々強引なカムクラに希灯は困惑しつつも嬉しく感じた。
『イズルくん、今日はなんだかグイグイ来るね。』
セロファンを剥がして痣に狙いを定めている最中のカムクラに言うと、溜め息を吐かれた。
「僕が手当てしなければあなたはロクな処置もせずに時間の経過を待っていたでしょう」
『私のこと心配してくれたの?。ふふ、優しいね。』
「……別に。あなたを信用してないだけです」
きっと希灯は自身のアバターをおざなりにするだろう。希灯の信用ならない適当な性格を信じてカムクラは希灯のコテージまで付いてきたわけだ。
それでも希灯は願ってもいない世話を焼いてくれるカムクラのことが珍しくてたまらなく嬉しかった。 他人のことなんて頼まれない限り助けないような性格だと思っていたから、きっと自分のことも気にかけてくれないだろうと考えていた。
それが意外にも怪我した自分に手当てが必要だと思ってくれたカムクラの気持ちが嬉しい。
『えへへ……ケガしてよかった。』
脇腹に湿布を貼り終えたカムクラに希灯が笑いかけると、カムクラは呆れたような表情で小さくまた溜め息を吐く。
「何を馬鹿なことを……。怪我するメリットなんて無いはずですよ」
『そうかもね。でも、今は嬉しいよ。』
カムクラの態度に上機嫌で希灯が返す。
『手当てしてくれてありがとう。復元されても外したくないな……。』
「付けっぱなしは肌がかぶれる原因にもなるので、必要がなくなったらすぐに外してください。もったいないだなんて愚かな考えですよ」
何でも見抜くカムクラだが、"もったいない"に含まれる意味まではきっと理解していないだろう。そう希灯は愉しげに微笑む。
イズルくんが付けてくれた物だからもったいない、なんて言ってもカムクラはきっと誰が貼っても効果は同じだと……もしくは自身の才能を称賛する故の言葉だと思うだろう。
超高校級の希望にも分からないことってあるんだ、と希灯は可笑しくなりクスクスと笑いが込み上げてきた。
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