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君と私と(非)日常

第28章 爺共からの床急ぎ


やがてカムクラが起き上がり、汗の浮いた希灯の額を一撫でしてから陰茎を引き抜く。
『ん……。』
ぐったりと寝そべったまま、希灯はカムクラを見つめる。
何もしていなかったかのように呼吸は整っていて、汗も火照りも目立っていない。ただ髪の毛はいつにもなく乱れていて、先ほどの情事を如実に物語っていた。
「お疲れ様です。少し休憩しますか?」
『……うん。』
カムクラはサイドテーブルに置かれたペットボトルの1つを差し出す。返事をしつつ受け取り、希灯も体を起こした。
1/3程の水を飲んでから一息吐くと、希灯は表情を曇らせ、オドオドとした声で話す。
『ね、ねぇ……イズルくん。えっと、あのね……。』
ペットボトルのキャップを手のひらの内でそわそわと握りながら言葉を詰まらせている。見るからに不安げな様子で、言いたいことがあるものの口に出すのを渋っているようだった。
『また、会える……?。』
縋るような目付きと声色で、希灯は再会の可能性を訊く。
希灯もその可能性が限りなくゼロに近いことを理解しているものの、僅かながらの希望が欲しかった。
「あなたが妊娠したらもう会うことはないでしょう。妊娠しなくとも、学園側が他の女に替えると決めた場合も会うことはありません。どうあれ、僕とあなたの意志だけではもう会えないでしょう」
カムクラが淡々と言う。それを聞いて、希灯はしゅんと視線を下げてペットボトルの蓋を閉めた。
『そっかぁ……。』
聞こえるか聞こえないかくらいの声量で返ってきた相槌に、カムクラは言葉を付け加える。
「けれど、絶対に会えないことが確定しているというわけではないです。学園が方針を変えたり、あるいは僕が学園から出たり……可能性は低くともあるんですよ」
励ますつもりはなく、不十分な回答に補足をするため。そう考えての発言だった。……そのはずだった。
「僕があなたと会いたいかどうかは置いといて、あなたは僕にまた会える可能性を持っています」
希灯が少し嬉しそうに口元を綻ばせながら顔を上げるのを見て、予期せずカムクラはどこか安心した心地になる。
『うん。うん……どんなに低くても、信じるよ。』
目を細めながら希灯は数度ゆっくり頷いた。寂しげな様子だが、希望を抱いているのが分かる表情だった。
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