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君と私と(非)日常

第23章 ラブコールサテライター


座り込んだ状態も保てなくなってすぐに倒れた。
辺りが血塗れになる。口も服も髪も床も全部真っ赤だ。
瞼を薄く開けて空を見た。明るいから星は見えない。
涙で霞む視界のまま、先程の宇宙船を探した。
あれは飛行機かな。鳥かな。UFOかな。宇宙船かな。
目を凝らすけど、どうやらどれも違ったようだ。ただの睫毛の影である。
もう空には何もないんだな。宇宙船も既に消えてしまった。
そう思うと、何だか解斗くんの存在自体が消えてしまったように思えてどことなく悲しかった。
私にとって空は天井みたいなものだから。宇宙なんて私からしたら有ってないようなものだ。
そんな所でこれから長旅をする彼に、私は物理的にも精神的にも追い付けない。
私に超高校級の才能と謎のウイルスの免疫があったらなぁ。
今頃はみんなでしんみりしながら地球にお別れをして、新しい生活に向けて仲良く打ち解け合っているところなんだろうな。
私も付いて行きたかったなぁ。まだ、この年で死にたくはなかったなぁ。
そもそもウイルスと隕石が降ってこなかったらこんなことにはならなかったんだ。
地球の滅亡なんてフィクションだけで十分なのに、こんなのってあまりにも酷いじゃないか。
空を見上げながらそんな事を考えた。咳が落ち着いて、少しだけ楽になる。

『…………。』

血なのか唾なのか分からない多量の体液を吐き出しながらも、何とかして立ち上がろうとした。
肘を突いて、手を突いて、膝を突く。
でも駄目だった。
力が上手く入らなくて、そのまま血で汚れた床に倒れ込む。
あぁ……これが最期なのかな。
予定は今日の夜だと思ってたんだけど、まぁいいや。
どうせ星なんて、もう隕石の明るさに負けて見えないんだから。
もう燃えるような真っ赤な空と、吸ったら病気になって死ぬような濁った空気しかないんだ。
どうせならさっさと死んで、そんなもののない所で生まれ変わるとかどうとかしたいな。
それこそ……宇宙とか。
死んだら空の星になれるんでしょ。だったらこんな惨めで儚い人類なんてとっとと辞めて光り輝くお星様になりたいな。
なんなら彼の乗る宇宙船が行き着く惑星の近くが良いな。
衛星として周りをクルクル回るよ。ずっと見守ってあげるよ。
静かな朝には愛を囁いてあげる。眠れない夜には子守歌を歌ってあげる。
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