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君と私と(非)日常

第23章 ラブコールサテライター



宇宙、行けることになって良かったね。
ずっと夢だったものね。資格も貰えたし、希望ヶ峰学園にも認めてもらえたんだから、君ならきっと人類の希望になれるよ。だから頑張って。



なんてことは言えなかった。
だって彼が高校生にも関わらず宇宙に行けることになったのは、探索や研究のための調査なんかじゃなく、もっとドラマみたいなロマンチックで残酷な理由があるからだ。
空の上に小さく瞬きながら上昇する光を見つめた。

『解斗くん……。』

今、彼はどんな気持ちでいるんだろう。
誰と何をしてるんだろう。
怖いのかな。苦しいのかな。地球の様子は内側から見えるのかな。新しい仲間と仲良くやってるのかな。
色んなことを思いながら光を見送った。
行ったっきり帰って来ることのない途方のない旅に出た宇宙船には16人の超高校級の生徒たちが乗っている。
コールドスリープってどんなのかな。失敗はしないのかな。
他人事をぽつりぽつりと考えながらマスクを外した。
冷たい空気が頬や唇に触れる。

――超高校級が何だってんだ! 大切な女の1人くらい乗せたって良いだろ!?

つい1ヶ月ほど前の彼を思い出す。
私には乗る権利がなかったから、解斗くんと一緒に行くことが出来なかった。
超高校級の才能はなかったし、それに先日感染の症状が出てしまったから。
凡才や感染が発覚した者を乗せることは許さない、と偉い人から言われたみたいで、怒った様子で「じゃあ俺も地球に残る」と反抗していた。
でもそんな彼は結局今は空の彼方へと飛び立っている。
長いこと説得されてもなお諦めない彼に死んでもらいたくなくて、私も突き放すようなことを言ってしまった。本当はもっと気持ち良く送り出してあげたかったけど、優しい言い方じゃ尚更彼は私を庇おうとするだろうと思ったからだ。
喧嘩別れのような雰囲気のまま今日になった。
解斗くんたちは人類という種自体の生き残りをかけて、遺伝子として地球の外に放り出されてしまったんだ。
今更もう遅いよな……。
あんな酷い言い方しなくてもよかっただろうに。私の言葉を聞いた彼は目を逸らし、そのまま黙って去って行ってしまった。
謝りたいなぁ……あんな顔が見たくて言ったんじゃないんだってずっと後悔してるから。
幼馴染みとして恋人として、彼を励まして見送りたかったけど、もうダメだ。
愚かな叱責で私たち2人の全ては台無しになった。
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