第1章 儚い思いは
「松田、今年も来たよ」
そう言って、彼は手を合わせた
_彼の名前は降谷零
仕事上、安室透という名前で周りと関わっている
中身は公安警察
表は私立探偵
そんな彼にも、当然プライベートはあって。
ほとんど休みのない彼にとって、この墓石_松田家の前で手を合わせるのは今日が初めてではない
例年のごとく、観覧車の爆弾解体で命を落とした松田陣平に声をかける
そして、その妹
松田晴香にも、同じことをする。
この2人は兄妹で、誰もが羨む仲のいい兄妹とも言われていたほどだった
実質、あの松田_すごく頑固な性格だったため_は、彼女には悪いことをした時謝り倒していた
そんな姿を見た降谷、萩原、伊達の3人は大笑いしながら兄妹の異様な光景を楽しんでおり、これがないと楽しくないんだよなあ、と萩原も笑顔でこぼしていたそうだ。
_少し前の事だった
いや、そう思ってるだけで
実はもう何年も経っている
松田陣平は、観覧車の爆弾解体処理で命を落とした
だが、爆弾解体のリーダーだ
そんなヘマをする訳が無い
理由は、市民の平和を守るため
爆弾を解体すれば市民を……と、酷い条件を出した犯人に対し、彼は市民の安全を優先
しかし、爆弾の下には妹
死なせたくはないと彼女に電話をかけた直後、奇怪なことに爆発してしまった
松田晴香は、遊びに来ていただけだった
松田陣平は、爆弾から命を守ろうしただけだった
この兄妹にどうしてそんな不幸が降りかかるのか
降谷はいつまでも答えが出せないでいた
だが、亡くなったのはこの兄妹だけではない
伊達も、萩原も
警察学校時代の友人は皆死んでしまった
虚無感が残り、その後降谷は自分に仮面を作ることが頻繁になる
そんな彼を見て、彼自身どう思うかと心配していた
それでも、死ぬのは申し訳ない
そう思い、毎年時間が空けばここに来ている
なかなか俺も律儀だ
そう、鼻で笑った