第4章 甘いキスを教えてあげる ※【大将優】
二人で遅い朝食を済ませ、外へ出る。
今日は特に当てもなく、ブラブラとショッピングだ。
雑貨屋に入り店内を物色していると、紗菜ちゃんがマグカップを手にしていた。
赤地に白いドットのデザイン。
「欲しいの?」
「うーん…可愛いなぁって。でも、うちにマグカップいっぱいあるんですよ。可愛いとつい買っちゃって。だから我慢します」
紗菜ちゃんはマグカップを元の場所へ戻した。
ふと目をやれば、同じマグカップがペアのセットで売っている。
もうひとつは、黒地に白いドット。
「じゃあ、俺が買う」
「え?」
俺はペアの方を手にした。
「うちに来た時、一緒に使おうよ」
「いいんですか…?買ってもらって」
「全然いいよ、このくらい」
「嬉しい…。お揃い」
「そう?じゃ、買ってくるね」
「はい、ありがとうございます」
高価なものじゃないのに、お揃いのマグカップというだけで嬉しそうにしてくれる。
何だか俺まで嬉しくなって…。
紗菜ちゃんのこんな笑顔を、ずっとずっと、一番近くで見ていたい……そう思った。
その後は、カフェでお茶してお互い秋物の服や小物を見て回ったりして。
時計の針は、あっという間に夕方を指し示す。
名残惜しいけど、明日からはまた仕事だし。
ようやく改修が終わった自分の家で、ゆっくりして欲しい。
「そろそろ帰ろっか」
俺がそう言えば、一瞬寂しそうにしながらも、すぐにそれを笑顔に変えて小さく頷く。
きっと、今の俺と紗菜ちゃんは、同じ気持ちだ。
思わず真横にある小さな手を取り、指を絡めた。
照れた顔をした紗菜ちゃんが、同じように細い指を絡めてくる。
おかしいよな。
明日も明後日も会えるのに。
休みだって同じなんだから、また二人きりで過ごせるのに…。
何でこんなに寂しくなるんだろう…。