第4章 甘いキスを教えてあげる ※【大将優】
「優チャ~ン、そりゃないじゃ~ん!せっかく遊びに来たのにさ?」
そいつはニヤついた顔でドアに手を引っ掻け、俺が閉めようとするのを邪魔しやがる。
「くくっ、黒尾!?何しに来た!?つか、何で俺んち知ってんの!?」
「梨央とこの近くの甘味処にかき氷食いに来たんだけどさぁ、休みだったんだよねー、もうガックリ。そしたら、大将んちがこの近くだって、梨央が言うから。外暑過ぎんだよ。涼ませてくんね?」
梨央さんがどうして俺んちを…?
ああ…そうか。
梨央さんの送別会の二次会、皆で俺んちで飲んだんだっけ。
「何でそこで俺んち!?つかお前仕事は?」
「今日は有給なんですぅー。そんなんいいから早く入れてくれよ。ほら、アイス買ってきてやったから」
「頼んでねーよ!」
「パピコあるぞ。お前好きだろ?」
「怖っ!何で俺の好物知ってんのコイツ!」
「ごめんね、優くん。急にお邪魔したら迷惑だって言ったんだけど…」
梨央さんが申し訳なさそうにひょこっと顔を出す。
「わかってますよ。こいつが強引に行こうっつったんでしょ?」
とにかく、紗菜ちゃんがここにいること知られたら変に弄られるに決まってる。
その上、風呂場から出てきたりなんかしたらもう…。
俺はいいけど、その餌食になる紗菜ちゃんが可哀想だ。
一刻も早く追い返さねぇと!
「今から出掛けんの。だから無理」
「出掛ける格好してねーじゃん」
うっわマジで目ざといわ、このドラ猫。
「ちょうど着替えるとこだったんだよ!帰った帰った!」
「なーんかムキになってね?」
「バッ…!はぁ!?なってねーし!」
ほんと何コイツ!コナン!?
ただひたすら押し問答を繰り返している中、背後でドアの開く音がした。
……風呂場のドアが。
「優さーん!シャンプー切れちゃったんですけど、替えありますー?」
「……」
「………へぇ?そゆこと?」
ニヤつく顔がほんっとムカツク。
「じゃあ、彼女さんにご挨拶を…」
「いらねーから!マジで!」
大丈夫、からかってるだけだ。
いくらコイツでも、この状況で本気で部屋に押し入ろうとはしないはず。