第4章 甘いキスを教えてあげる ※【大将優】
「……朝だし……。いや、昼…?」
遮光性の薄いリビングのカーテンから、日射しが差し込む。
キスだけで満足して寝ちまうなんて…。
両手で抱き込んだ紗菜ちゃんを見下ろしてみると、まだ気持ち良さそうに眠っている。
結局、昨日は何時まで起きていたのだろうか?
可愛い寝顔に密かにキスを。
起こさないように体を捩って、紗菜ちゃんから腕を引き抜いた。
いつも紗菜ちゃんが朝飯作ってくれてるから、今日は俺が。
二人で食べてシャワー浴びたら、どこかに出掛けよう。
洗面を済ませてキッチンに立ち、卵を手に取る。
すると後ろから、控えめな紗菜ちゃんの声が届く。
「おはようございます」
「あ、おはよう」
「……」
「……」
ヤバイ……
すげー照れる……。
「えっ…と。眠れた?」
「はい…。優さんは?」
「うん、俺も」
「あ、ごはん…!すみません、作ります!」
「いいよ、紗菜ちゃん」
パタパタとスリッパを鳴らしてキッチンに近づいてくる彼女を、やんわり止める。
「いつも作ってもらってるから、今日は俺に作らせて?シャワー、浴びといでよ」
「…はい。ありがとうございます」
「うん」
恥ずかしそうにしながら、紗菜ちゃんはリビングから出ていった。
風呂場からは、シャワーの音が響いてくる。
さすがに真っ昼間から手を出そうとは思わないけど、風呂上がりなんて絶対意識しちゃうだろ…。
飯食ったらさっさと出掛けるに限る!
煩悩を掻き消すようにオムレツ用の卵を溶き始めたところで、今度は玄関のチャイムが鳴った。
……?誰だ?
「はい?」
『ちわーっス。黒ネコ急便でーす』
インターホンのマイク越しから聞こえる声に、そういえば、と思い当たる。
あー、米頼んでたっけ。
いそいそと玄関へ行き、開いた扉の先には……
「よぉ」
「………」
咄嗟に扉を閉めようとする。
が、トサカヘッドの大男にそれは阻止された。