第4章 甘いキスを教えてあげる ※【大将優】
思わぬ告白に、一瞬思考が止まる。
あの頃…って。
紗菜ちゃんがバイトしてた、3年前のこと…?
「優しいし、気配り上手だし、落ち着いてて素敵だし、大人の男の人って感じで」
「あー……そんなことは……」
ヤベ…実はめちゃくちゃガキっぽいとこあるんだけど、俺…。
何か紗菜ちゃんのこと、騙してる?
「あ、でも黒尾さんといる時はすごく子どもっぽいですよね。あと、ゾンビ怖がり過ぎだし!」
クスクス思い出し笑いした拍子に吐息が漏れて、俺の首元を擽っていく。
妙な気持ちになりながらも、どこかホッとした。
ああ、よかった。
騙してはないみたいだ。
……よかったのか?
「3年ぶりに会って、また好きになっちゃって…。だから…映画誘ってくれた時、嬉しかった…」
「…うん」
そっか……。
俺が梨央さんに夢中だったあの頃。
紗菜ちゃんは、俺のこと見ててくれたんだ……。
ポツリポツリそこまで話すと、紗菜ちゃんは首元から顔を上げて俺を覗き込んだ。
「彼女に…してくれますか?」
そんなの、聞かれるまでもない。
当然のようにそのつもりでいたけど。
ああ…そっか…
ちゃんと言葉が欲しいよな。
「もちろん。紗菜ちゃん、俺の彼女になってくれる?」
「………はい。嬉しい…」
ホッとしたように笑って、顔を近づけてくる紗菜ちゃん。
何でだろう?
紗菜ちゃんからは、すごく甘い匂いがする。
ほら…
触れた唇も味わう舌も、甘くて堪らない。
キスを覚えたての10代の頃みたいに、時間を忘れていつまでもこうしていられそうだ。
とは言えもっと先に進みたい欲もあるから、耳にキスしたり、首筋を唇でなぞったりもするんだけど…
少し紗菜ちゃんの唇から離れただけで、もう恋しくなってまた啄みたくなる。
こんなの、おかしいだろ…
そう思うのに、ただ夢中で紗菜ちゃんとのキスに溺れて…
結局その夜は、二人抱き合ったまま、ソファで眠ってしまった。