第4章 甘いキスを教えてあげる ※【大将優】
先週と同じ映画館で同じ映画を観て、その後は近くのイタリアンの店へ。
他愛ないお喋りも交えながらピザとパスタを食べて、一杯ずつワインを飲む。
こうして向かい合って座ってると、当然ながらずっと紗菜ちゃんが視界にいるわけで…。
明るい笑顔も、照れた顔も、パスタを取り分けてくれる手つきとかも…
確かに紗菜ちゃんなのに、何だか違う女の子にも見えて。
また、鼓動が速くなる。
紗菜ちゃんって、こんなに可愛かったっけ…?
昔から…?
それとも、やっぱり3年経って女らしくなったから…?
じゃなかったら、俺の心の変化のせい…?
「紗菜ちゃんさ…」
「はい?」
「…彼氏、いる?」
「え?」
これだけは確かめときたい。
不毛な恋は結構キツイこと、もうわかってるから。
「……いませんよ」
緊張していたのか、その答えを聞くまで酷く胸が騒がしかった。
「優さんは?彼女…」
同じように問われて、すぐに首を振る。
「いないよ。……じゃあさ、」
紗菜ちゃんが俺をどう思ってるかはわかんねぇけど。
動いても…いいよな?
「また、誘ってもいい?」
「…はい」
小さく答えてくれた紗菜ちゃんの顔が赤かったのは、飲んでいたワインのせいだろうか…?
それとも、ちょっとは期待してもいいんだろうか…?
その次の週は、二人で水族館に行った。
色鮮やかな熱帯魚やイルカにはしゃぐ姿も新鮮で可愛くて。
紗菜ちゃんといると、心が和む。
ああ……
俺、紗菜ちゃんが好きなんだ……
そう自覚するのに、時間はかからなかった。