第4章 甘いキスを教えてあげる ※【大将優】
翌日は、澄み渡る晴天。
夏の陽射しが眩しい。
待ち合わせ場所に決めた駅前で、紗菜ちゃんを待つ。
腕時計を確認すると、約束の10分前。
早く来すぎたか?
でも、女の子を炎天下待たせるのは悪いしな。
額に滲み始めた汗を腕で拭う。
すると、遠くから俺を呼ぶ声が…。
「優さん!」
振り返ると、紗菜ちゃんが駆け寄ってくる。
「すみません、遅れて!忘れ物して一旦家に戻ったんで…!」
「いや全然。俺が勝手に早く来ただけだし。ていうか、走ってこなくても…」
俺、そんな時間に煩そうに見える?
呼吸を整えてる紗菜ちゃんに、思わず吹き出しそうになる。
「何観ようか、映画」
今上映中なのは、有名どころだと邦画の恋愛ものがひとつ。
それから、海外のアクション映画。
「優さん、苦手なジャンルあります?」
「ホラーかな」
「よかった…。それは私も無理なんで。じゃあ、こっちはどうですか?」
映画館の入り口で彼女が指したのは、アクション映画のポスター。
「映画館の大画面で見るなら、こっちの方が楽しめそう!」
「確かに。じゃあ、こっちな」
平日ということもあり、やっぱり館内は空いていた。
俺たちの前後左右に人が座るということもなく、集中してスクリーンだけを目に映す。
ハリウッドの有名俳優が主人公のシリーズもの。
スタントなしのアクションシーンと、迫力のあるCG、謎解き要素なんかも含んでいて、あっという間に世界に吸い込まれた。
エンドロールが流れ出した所で、ようやく隣の紗菜ちゃんに目を向けてみる。
彼女も小さく感嘆のため息を漏らしていて、映画の世界を楽しめたのだということが見て取れた。
誰かとこんな風に映画を見に来たの、そういえば久しぶりだ。