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日章旗のデューズオフ

第4章 SSS キャラ×男主:漫画作品篇(―/2日更新)



★GK杉元佐一

買い出しのさなかで横着したのが拙かった。重ねて風呂敷に包んでしまった杉元のわっぱと自分のわっぱ、どちらがどちらのだか分からなくなってしまったのだ。互いに潔癖じゃないけど他人が永らく愛用しているわっぱを取り違えてしまえば嬉しいものじゃない筈だ。でも待てよ、杉元の奴、最近新調してなかっただろうか。動揺が極まって記憶が曖昧だけどそんな気がしてきた。
(もう一個買って杉元のだって言って渡せば済むよな……これは中身が勿体ないから貰っちまおう)
手の内の僅かな金を数えながら視野を狭くしていれば、とつぜん背後から肩を抱かれて一気に汗が吹き出す。どうして人って奴は疚しい事をした後に正義の鉄槌が下るんだろう。お天道様は見てるんだな。
「名前、俺の私物がそんなに欲しいのか? まさかその鞄の中に褌は入ってないよな。二日前に無くしたところなんだ」
「持ってるわけないだろっばかやろっ!」

★GK谷垣源次郎(横着主続き)

谷垣さんは元軍人のマタギなのにどうにも少し気が抜けたところがある。俺の目の前で雪の斜面を転がり落ちて行かれては助けずにはいられない。後ろに居た杉元はほっとけよって叫んでたけどそうはいくもんか。寝覚めが悪いだろ、このまま彼が雪達磨になって冷たくなっていたら。
斜面を降り切ると沢があって、谷垣さんは岸辺に座り込んでいた。俺を見留めると片手を上げて力なく微笑む。「大丈夫ですか」と問えば「ありがとう、無事だ」と額の汗を拭う。いやいや怪しすぎるだろ。
「……」
「っ!」
膝を立てた姿勢が気になって脛を触れば谷垣さんは引き攣った表情を見せた。やはり強がってたみたいだ、弱さをみせないのも軍人の務めってか。裾を割くと真っ青に腫れた脚が顕になって息を飲む。
「……肩貸しますから上まで戻りましょう」
「だが」
「だがもこうしたもない! 早く診てもらうべきだってわかるだろ!」
「……は、はい」
叱った筈なのに、何故か谷垣さんは頬を真っ赤に染めてぼうっと俺を見詰めてきた。肩を貸すのに密着した後もじっと横顔を凝視されてしまった。

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