第5章 5.
「ないじゃ、しっかい笑えっとじゃねか」
ひとしきり笑った沙夜は、そう言った豊久を見た。
豊久は、朗らかに笑っていた。
信長も与一も、優しい笑みを浮かべている。
沙夜は訳が分からず首をかしげる。
「いつも、引きつったぎこちなか笑みか、泣いとるようにしか笑わんかったからのぉ…
てっきり、笑い方を忘れてしもたのかと思(おも)ちょった」
「…私、そんな風に笑ってましたか?」
信長と与一がはっきりと頷いた。
「応。というよりお前さん、儂らと一線を画しておったろう?」
「私たちはもちろん、エルフたちも心配していたのですよ」
特に女性たちが。と与一は付け加える。
沙夜は頰をムニムニと触って確かめる。
別におかしな所はないと思うが、彼らがそう言うのなら、そうなのだろう。
「貴女の世話をしたいと、女性たちが自分から言ってきたときは僕たちも驚きました」
「彼女たちが…?」
確かに、目が覚めてからずっと、食事の用意も包帯の交換もリハビリも全て、エルフの女性たちがしてくれていた。
まさか、自ら進んで来ていたとは知らなかった沙夜は心の内で驚く。