第4章 4.
せめてカンストさせてあげたかったな…と今度は沙夜が遠い目をして嘆く。
が、それは10秒も経たず沙夜はあ、と何かを思い出した。
「島津家と言えば、明治時代ぐらいまで薩摩の地を治めていたと聞いたことがあります。
それは外国から見てもとても珍しいのだとか」
それを聞いた豊久は本当に嬉しそうに破顔した。
「ほうか…!
ほうか……‼︎」
「何でだよ⁉︎
何でお豊の家はそんなに長く続いてんのに俺ん家は無駄になったんだよ‼︎」
「信はたくさん逸話があるらしいからいいじゃないですか。
僕なんてやっぱり扇撃ち抜くところぐらいしか伝えられてないんですよ!」
いつの間にか復活していた二人は豊久に食ってかかった。
豊久は初めこそ相手にしていなかったが、あまりのしつこさにやかましいと怒鳴る。
しまいには首を取られたいかと刀を持ってくる始末。
三人の馬鹿騒ぎを初めは呆然と見ていた沙夜だったが、次第にふふっ、と笑い出した。
「あははははっ!」
そして、声を出して笑った。