第2章 2.
「………はい?」
沙夜は目を大きく見開いた。
冗談ではないかと二人を見るが、彼らは何も言わない。
それどころか
「私(わたくし)は与一。
那須資隆与一でございます」
「俺(おい)は島津。
島津中務少輔豊久じゃ」
沙夜は頭を抱えた。
「……うそやん」
三人とも歴史に名が残る名将たちだ。
特に、織田信長と那須与一は知らぬ者はいないだろう。
扇を射抜いた名射手に、天下統一を寸前とはいえ果たした天下人。
そして、島津家きっての猛将。
これを信じろと言われても、出来るわけがない。
しかしここはもはや日本ではなく、言葉もわからない異世界。
エルフが存在する時点で、異世界なのだと認識せざるを得ない。
日本はおろか、元の世界では絶対にあり得ないことが、ここではあり得ている。
なにより、ここにいる三人は生死が定かではないのだ。
ならば信じるしかないし、認めなければならない。
彼らは本物の、戦国武将なのだと。
沙夜が顔を上げると、信長はなぜか得意そうに笑み、豊久はどうしたのかと目を丸くし、与一は心配そうな顔をしていた。
豊久と与一の反応はともかくとして、信長の笑みを見てなんとなく張っ倒したいと思ったのは、沙夜以外は知る由もなかったりする。