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死神に教わる甘え方。【R-18】

第4章 12月16日【あと8日】


【死神side】

「どうしてここにっ……」

彼女の強ばった声が、静かな闇夜の中に響く。

遅いから心配になって来てみたらこれだ。変な輩に絡まれた、とかじゃないのは分かる。だって親しい口調だし。

男か。
同僚だろうか。

どうして、かな。

「どうしてあなたは……どうして俺は……」

こんな馬鹿げたことを繰り返すのだろう。何度も何度も。もう、疲れた。何度もやめたくなった。でも、やめてはいけないと自分に言い聞かせてここまで来た。彼女のためだ。彼女のためになるなら、俺くらい、と。でも結局はこうなるんだ。

「来なければよかった。あなたを追いかけてこなければよかった。そうすれば………」

彼女の傷ついた目が。
今にも泣き出しそうな目が、俺を見つめる。

「そうすれば、こんなにも俺が苦しまなくて済んだのに」

**********

聞き間違いであってほしいと。
何度そう思ったか。

『こんなにも俺が苦しまなくても済んだのに』

感情のない声で死神が私に放った言葉は、本当に私に向けられたものだったのだろうか。まるでそれは、私であって、私ではない何かに訴えるようだった。

分からない。
この死神が私には分からない。

彼は何を見ている?

彼が見て追いかけているのは私じゃない。ここまで私を迎えに来たのは事実だが、彼が見ているのは私じゃない。私のずっとずっと奥に、先にある誰かだ。その誰かが、彼が、分からないことが辛い。

どうしてこんなにも辛いのか。
どうしてこんなにも胸が痛いのか。

分からない。

何も分からない。

でも、今は。
今だけは。

そういうのを全部捨ててでも、彼に寄り添わなければ。

そう、思った。
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