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死神に教わる甘え方。【R-18】

第4章 12月16日【あと8日】


「な?美味いだろ?」

森下先生が唐揚げを一つ摘みながら、なぜか得意げに言う。

「洸が言うなよー。ここは俺がカッコよく決めるとこだろー?」

店長がブーブー文句を言いながら、また店の奥に消えていく。そして、1分も経たずにまた戻ってくる。

「これ出すの忘れてたわー。冷奴は定番だろ」

「あー、俺は要らない。豆腐苦手」

「ちゃんと一つしか持ってきてねーだろ」

冷奴……。
湯豆腐が良かった。とか、言えない。

店長がまた奥に戻ってから、森下先生が私に話しかける。

「何か悩み事でも?」

「え?」

「今朝、そんな顔してたから」

悩み事……。
なくはない。死神と正面切って喧嘩をした訳では無いけど、気まずいのは否めない。

というか、それに気付く森下先生は一体何者なのだろうか。そんなに分かりやすい性格ではない……と信じたいのだけど。

「そんなに顔に出てた?」

「ずっと見てたんだし、分かって当たり前。好きな人のことなら全部分かりたいって思うのは当然だろ?」

「………そういうものなの?」

なにが?と森下先生が私の顔を伺う。
知らず知らずのうちに口から漏れてしまった言葉なのでどう弁解しようかと焦る。でも、ここで言い訳すると見苦しい。

「え?あ……いや、その………好きな人のことなら全部分かりたいっていうの……本当なのかなーって」

森下先生が悩むような仕草をとる。

「俺は少なくともそうかな。好きな人の事なら全部分かりたいって思ってる。……もしかして、気になる人がいるとか?」

すぐに浮かんだのは死神の顔。
彼のことを何も知らないことを悔しく思いはしたけど、これが恋とは思えない。ただ、悔しいだけで、きっとこれは恋じゃない。

「ううん、違う。なんとなく、そう思っただけ」

もう一度死神の顔を見れば、これが恋なのかどうか分かるのだろうか、と自分に問いかけてみるが、答えなんて出なかった。
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