第10章 立ち止まってもいいですか?
振り返るとそこには見慣れない女の子が立っていた
「誰だ?」
「仁さん、橘です。橘 愛子です。」
「……」
「今日からこちらの特別科に転校してきましたの。まさか仁さんに会えるなんて。もしかして私を迎えに来てくださったのですか?」
ニッコリ笑う彼女は噂の転校生らしい…。私よりも少し小さめな身長でふんわりとした印象。焦げ茶色の髪を低めの位置でツインテールしている。
「フフッ、嬉しいわ…。仁さんから会いに来てくださるなんて」
「……」
仁の表情は難しそうな顔をしていた
「隣の方はどなた?私とリボンの色が違うから普通科の方ですよね?」
「……」
「女遊びは許しますけどほどほどにしてくださいね。女性が本気にされたら困りますから」
「……」
「私たち“許婚“ じゃないですか?」
ん?いい…なずけ?許婚!?
「うぜぇ……。そんなの誰が認めた?あ?」
「でっでも、これは桜宮家に遣えるものとして代々の慣例ですっ」
「すでにそれは放棄されている」
「…っ!その隣の方があなたのお慕いしている方なのですか?」
「お前に関係ない。行くぞ、あいり」
こちらを睨んでいる彼女の視線を感じながら強引に車に乗せられた
「…なんでよ!なんで私じゃないのよ!?…あの女潰してやる…」
先程のふんわりとした笑みとはうって代わり、憎しみに満ちた表情をした彼女がそこにいた…