第10章 立ち止まってもいいですか?
互いに無言でいつもの最上階に着く
仁の雰囲気に何かを悟ったのか誰も口を開かなかった
いつものソファに座る仁
その脚の間に座る私…
『…仁、どういうこと?許婚ってなに?』
「…優」
仁は面倒臭そうに優を見る
「あいり、橘と会ったんですか?」
『…ん』
優は“橘”という名前に反応した
「…仁、俺から説明してもいいんですか?あなたが直接あいりに説明すべき内容では?」
「…奥に行く…しばらく部屋に近付くな」
仁に連れられ部屋に入る
ベットに座ると後ろから仁に抱き締められる
「このままで話してもいいか?」
『…ん。』
「お前は桜宮グループをしってるか?」
『ん。』
桜宮グループは歴史のある企業
今では世界に名を轟かせる有名企業で経済界で大きな権力を握っている
夏海の飯島よりも上の地位になる
「ああ。俺は…俺の本名は桜宮 仁…」
『さ、桜宮……』
私を包み込む腕が強くなる
「桜宮グループの現社長の次男だ」
『ん』
「桜宮は代々血を濃く残すために親戚同士での結婚が求められてきた。生まれながらにして俺にはあの橘の娘が宛がわれた。だがな、その仕組みに反対したヤツがいたんだ。それが親父だった。親父は周りのクソみたいな連中の反対を押しきってお袋と結婚した。
俺は女なんて誰でも同じたと思ってる。だからあの橘の娘を拒否しなかった。子どもを産ませる道具としてな?」
『ん』
「だがお前と出会った‥俺はお前が欲しい」
『…ん』
「俺も周りが何と言おうが好きなやつと結婚してぇ」
『…ん』
「桜宮と戦う覚悟はあるか?」
『……』