第8章 〜8〜
「後でお礼言わなきゃですね」
「ええ、喜ぶと思いますよ」
「それはどうかな……」
「ふふ、徐々にですよ」
「頑張ります……」
その時、ふと誰かに見られている気がした。
でも周りの家臣達はそれぞれに会話したり、目をつぶって休んでいたり。
政宗も家康さんも2人で話していて、誰も自分を見ている人は見当たらなかった。
(なんだろ、視線感じたんだけど……気のせいかな。)
わからないことは考えてもしょうがないと思い、視線を感じたことは忘れることにした。
そうしているうちに休憩がおわり、また2時間ほど歩くと大きい城が見えてきた。
「様、あそこに見えるのが安土城ですよ」
「あれが……」
予想以上に大きい城が見えて、織田信長の力の強さがわかったような気がした。
「あと四半刻も歩けば着きますよ」
「はい。(あ、時間の言い方後で誰かに教えてもらわなきゃな)」
徐々に疲れが溜まってきたが、ゴールが見えてきた事もあり、気持ちは楽になっていた。
安土城でどんな暮らしが始まるのか。
不安も沢山あるが話せる人も出来たし、楽しいこともあるんじゃないかと思い始めていた。
元いた時代では毎日気力もやる気もなくただ生きていたような自分にとって、この時代ならなにか自分がやるべき事があるかもしれない。
そんな少しの期待感を胸に城へと歩き続けた。