第7章 〜7〜
盆の上のとっくりから信長が持つ杯にお酒を注ぐと、信長はもうひとつの杯を私の前に差し出した。
「貴様も飲め。」
「は、はぁ……」
私が杯を持つと問答無用で酒がつがれた。
(これ日本酒……?あんま飲んだことないけと大丈夫かな……)
そう考えながら杯を見つめていると、既に杯を空にした信長が言った。
「貴様、俺様が酌をした酒が飲めないとでも?」
ニヤリと笑いながら信長が言った。
(この時代からパワハラってあるんだなぁ……)
なんて、かなり場違いな事を思いながら杯をくいっと傾けて、液体を流し込んだ。
「あ……美味しい……」
「ふっ、貴様にいける口だな」
そう言って信長は再び私の杯を満たし、促した。
「今宵はとても気分がよい。貴様のおかげでこの酒を飲めるのだ。礼を言うぞ。」
「……はい。」
野営に入った時、抱えていた不安など気が付けば消えていて。
確かに不安な事ばかりだが、目の前で酒を飲む人を見てると、難しい話を考えている自分が少し馬鹿らしくなり、私は2度目につがれた酒を飲み干した。
トリップしたのが、何故私だったのか。そして、何故戦国時代だったのか。
私が持つ疑問には何も解決出来てないし、解決できる可能性も今は無い。
でも、助けたのが強気なこの人でなんとなく良かったかもと、ほろ酔いの頭で思い始めていた。