第14章 〜14〜
家康はふと優鞠に尋ねた。
「ねぇ」
「なに?」
「俺のこと……どう思ってる?」
「どう思ってるって……」
「嫌い?」
「嫌いなわけない……」
「じゃあ、なに?」
「……」
優鞠がどう応えようか言葉に詰まったのを見て、家康はふっと吹き出した。
「ふっ……困ってるって顔」
「だって……ついさっきだよ?家康様が竹千代様だって知ったの。そりゃ困惑するでしょ」
「まあね」
「……でも」
「?」
「竹千代様……ううん。家康は……今でも私の大事な人だよ?」
「……え?」
「竹千代様と遊ぶ日が待ち遠しかった。毎回が楽しかった。色々あって、1人になって、辛いこと沢山あったけど……家康との楽しかった思い出があったから、私は頑張ってこれたの。」
「……そっか」
「あの時……言えなかったけど。家康、ありがとう」
「ふっ、それ俺の台詞」
「ふふっ」
2人は笑いあった。
(優鞠……良かった。生きてて……。それもこんな近くに居たなんて。あんなに想ってたのに気が付かなかった。でも、これからは毎日だって会える。)
家康は嬉しさが募っておかしくなりそうだ、と自嘲するしか無かった。
あの時、密かに持っていた恋心が10年以上の時を超えて再燃するのを感じた。
(……女中だからとか俺には関係ない。そもそも織田家の女中だしね。)
家康は心の中でそう呟いた。
優鞠も懐かしい再開に喜びつつ、昔とは随分変わってしまった立場に少しだけ悲しくなった。
もし、父が今も生きていて私が姫だったら。
そんなこと考えても意味が無いと分かっていても、どうしても考えてしまう。
また仲良く話せたらなと思いつつも、との関係もそうだが、やはり周りの目を気にせずにはいられなかった。