第14章 〜14〜
「ここ。俺の御殿。」
「はい……存じております……」
「ふ、それもそっか」
家康は機嫌よく答える。
優鞠は困りながらも、少し昔を思い出して懐かしい気持ちになる。
「……昔も……手を繋いで城内をお散歩しましたよね」
「そうだね。懐かしい。」
家康は目を細めて笑った。
御殿の中へ入ると、家康は優鞠を座らせ自分もその向かいへ腰掛けた。
「……ねぇ」
「はい、何でしょう」
「敬語、やめて」
「ですから……」
「ここには今俺たちしかいない。」
「……今だけ……ですよ」
優鞠は困ったように笑った。
「別に俺に敬語使わなくたって誰も怒らないよ」
「そんなこと……ないよ……女中の先輩にも家康様素敵とか言ってる人沢山いるし……こういう事で目をつけられるのは嫌なの」
「優鞠が嫌な事は強制しない。でも俺と2人っきりならいいよね?」
「……でも」
「俺がいいって言ってんの。決定。」
「わかった……」
優鞠は押し切られ頷いた。
目の前で嬉しそうにしている家康を見ると強く跳ね返すことが出来なかった。