第14章 〜14〜
「……忘れてた訳じゃないんだ」
「もちろんでございます。竹千代様と遊んだことは、私の数少ない楽しかった思い出でございます。忘れるなんてこと……」
「優鞠。顔上げて」
顔を上げると、嬉しそうに笑う家康が居た。
「良かった。覚えててくれて。」
その笑顔は、思い出の中の竹千代様と瓜二つでますます申し訳なく感じた。
「本当に申し訳ございません……」
「謝らないで。怒ってないから。」
「?」
「むしろ謝るのは俺の方」
「どうしてですか……?」
「さっき、との話聞いてた。」
「え……」
「優鞠の過去の話」
「……」
「あんなに色々あったなら、何回か会って遊んだけの俺のことなんて、覚えてなくてもしょうがないと思ってた。でも優鞠は覚えててくれた。それだけで俺は嬉しい。」
「…………」
「盗み聞きしてごめん。」
「そんな……」
「優鞠、大変だったね。」
「……はい……」
「また……会えて良かった……」
「……私もでございます……」
家康は嬉しそう微笑む。
優鞠も釣られて微笑むと家康は照れたように顔を背けた。
(やばい。)
優鞠は顔を背けられた意味がわからず首を傾げる。
(可愛すぎる。)
家康は自分を覚えていてくれた優鞠がたまらなく愛しく思えて、柄にもないと心で自嘲した。