第14章 〜14〜
(話って……いったい何だろ……怒ってる風ではないけど……それより歩くの早いよ……)
優鞠はそう思いながら家康の背中を追いかける。
すると、周りに人気が無いことを確認した家康が足を止めゆっくり振り返った。
「ごめん。急に連れ出して」
「いえ、私は構いませんが……。お話とは何でしょうか……」
優鞠が恐る恐る訊ねると、家康は悲しそうに呟いた。
「覚えてない……?」
「え?」
「俺のこと、忘れた?」
「……どういうことですか……?」
「……」
優鞠は訳が分からず首をかしげて家康を見た。
「あんた、子供の頃。安土城に来たことあるよね?」
「……なぜご存知なのですか……」
「やっぱり」
「……え?」
「子供の頃、ここで遊ばなかった?」
「(懐かしい……でもなんで……?)はい、父に連れられて何度か安土城に遊びに来たことはございますが……」
優鞠は当時のことを思い出そうと頭をひねると、ある人を思い出した。
「え……まさか……竹千代様……?」
「やっと思い出した?」
「え……竹千代様って……」
「俺だよ。竹千代から何度か名前変えて今は徳川家康。」
「!!」
「ふ、知らなかったの?」
優鞠はびっくりして家康を凝視した。
だが、すぐに慌てて頭を下げた。
「も、申し訳ございません。まさか家康様の幼名が竹千代様だったとは知らなくて……勉が足りず失礼をいたしました……」
優鞠は驚きながらも謝罪した。
(……言われてみれば……面影ある……)
女中になってから、話したことはないにせよ、顔を見たことは何度もあったはずなのに、なぜ気が付かなかったのかと、優鞠は自分を責めたが、家康はほっとした声で言った。