第22章 2人だけで
‐りんside‐
店を出て、ちょっと歩いた所で赤葦から渡されたのはスマホ。
キラキラにデコられているから、多分みつの方の。
画面は赤葦と通話中になっていた。
「俺のは店に置いて…いえ、黒尾さんに預けて来ました。スピーカーに設定しているので、ある程度は音を拾いますよ。」
2人の会話が気になるならどうぞ、と言いたいらしい。
普段は見ない綺麗な笑顔でよく言えたな。
これ、盗聴と変わらない行為だし。
もし、聞いていた事がバレたら後が怖いの私なんだけど。
分かっていても、私が居ない場所で蛍くんがどんな話をしているかは気になって。
恐る恐るスマホを耳に当てた。
聞こえてくる店の中の会話。
赤葦が黒尾に渡したなら、狙いとしては蛍くんの本音を私に聞かせようってトコだろう。
だからなのか、やたらと黒尾が蛍くんに絡んでる。
そして、やっと聞けた彼の本音は…。
勝手に不機嫌の理由を勘違いして、往生際が悪いとまで言ってくれた。
確かに、そう勘違いしてたなら、私を追い出したかったのは分かる。
それで私がウジウジしてたなら、向こうだって気分は良くない。
でも、勘違いは勘違い。
ハズレの解答。
『…で、正解は?』
誤解の解き方を考えていると、答えを求める黒尾の声がスマホのから聞こえてきた。
完全に、私に向けて話してきている。
そんな事をされたら、盗聴がバレる訳で。
嫌な予感がして、少し離れた店の方を振り返った。