第22章 2人だけで
‐月島side‐
りんさんの様子がおかしいって、気付かない程、鈍感な人間じゃないんだよ。
その理由も、分かってる。
僕の実家に行きたくないから。
それ以外に考えられない。
でもね、この人達に話したら、婚約者の実家を嫌がった女ってイメージでりんさんを見るようになるし。
最悪、木兎さん辺りが騒いで責める可能性もある。
だから、言わない。
「俺さ、あの人とは、それなりに長かったモンで。アレが不機嫌じゃねぇの、分かってんだけど?
悩んでる時の顔だろ、アレは。」
「ソーデスネ。」
昔の男に分かってる面をされて、カチンとはきた。
自分も分かってるって顔をするのが精一杯の応戦。
「何に悩んでるのか、お前、分かってんの?」
「…さぁ?」
「じゃ、俺が教えてやろうか?
お前、今年の正月は実家でって話してたよな?」
ただ、黒尾さんは一応まだルームシェアしている相手で。
僕の予定を把握していたトカ、運が悪いよ、全く。
僕達の関係を知ってれば、今回の帰省はりんさんを連れて行こうとしているのくらい、誰でも分かる。
そうなると、彼女の悩みを読むのは黒尾さんには簡単な事みたいだね。
珍しく、りんさんを護ろうとしたら、この結果。
慣れない事なんか、するんじゃなかった。
「僕の実家に行くの嫌だから断り方で悩んでるんデショ。往生際悪いですよねー。」
黒尾さんに言われるくらいなら、自分で言ってやる方がまだマシかなって。
言わない筈だった話を口から出した。