第22章 2人だけで
黒尾さんは、馬鹿じゃない。
空気を悪くしたままのつもりは無かったようで、少しの間の後、飲みに混ざると示すように腰を下ろした。
ただ、座った場所が大問題。
月島くんと、りんさんの間だった。
完全に、月島くんに喧嘩を売りにいっている。
「黒尾さん、人のものになると思ったら惜しくなっちゃいました?」
「そうかもな?」
ピリピリとした冷たい空気が戻ってきたけど。
また扉が開く音が聞こえて、皆の意識がそっちに逸れた。
入ってきたのは、本日の忘年会に参加する最後の1人、秋紀で。
飲み会なのに騒ぎもせず、皆が皆、そちらを見た事に若干びっくりしている。
「…え?何?俺、なんかしたか?」
「してない。寧ろ助かった。」
「なら、良いんだが…。」
異常な空気感を察して、恐る恐る近寄ってきた。
当たり前に私の隣に座ってくれたは良いものの…。
「なぁ、何かあった?」
何で、こんな状態なのか知りたいようで、小さな声での問い掛けが聞こえてくる。
説明とか苦手な上に、面倒臭いと思う私が上手く纏めて話せる訳は無く。
逆にそういうのが得意そうな赤葦さんに任せようと目配せしたけど。
みつがすでに酔い潰れていて。
「すみません、早いですがみつを連れて帰ります。りんさんも帰るなら、送りますから。」
「…うん。お願いしていい?」
この空気になった原因までも連れて帰ってしまった。