第22章 2人だけで
落ち込んでいる訳じゃなく、具合が悪かっただけか。
自分の所為じゃなかったのは安心する所だけど、このまま帰して良いとは思わない。
具合が悪いりんさんを、1人で帰すとか、駄目。
帰ったら?なんて、他人事みたいだった月島くんが許せなかった。
奥さんになる人相手に、何を言ってるんだ。
怒ろうと思った、その瞬間。
扉が開いて、反射的に顔を向ける。
入ってきたのは、黒尾さんだった。
荷物を持って立ち上がってるりんさんを見て、挨拶の言葉すら発する前に眉を寄せている。
「…月島、その人帰すつもり?」
「私、具合が悪くて…。」
「俺が話し掛けてんの、月島な。」
見ただけで状況を理解したようで、黒尾さんの声は低かった。
いや、理解したのは、状況だけじゃないだろう。
だって、いつも通りの黒尾さんなら、こんな風にいきなり噛み付いたりしない。
りんさんが代わりに答えたくらいで、それを制止してまで、月島くんに何かを言わせようとしたりしない。
黒尾さんしか分からない何か…りんさんの心情だとか読み取ってるに違いない。
答えない月島くんと、答えを求めている黒尾さん。
2人の間に、冷たい空気が流れている気がした。