第5章 魔法対決【英諾尼】
モル君を可愛がりながらルーマニアとブルガリアの他愛ない話に付き合っていると、キラキラとした光がこちらへ向かってきた。あっという間に私の方へ迫ってくる。すかさずルーマニアが立って長めの杖を出し、その光へ向かって杖を勢いよく降り下ろした。
その瞬間、ルーマニアの杖から強いフラッシュのような光が放たれたと思ったら、チビ化したノーレと猫耳と尻尾を生やしたアーサーがムスッとした表情で私達を見ていた。
「おにちゃん、何かあったのか?」
ビックリしていたモル君の質問にルーマニアは疲れた笑顔で淡々と言い放った。
「モルはあんな大人にならないでねー?」
「……わかったのな!」
空気を読んで素直に返事をしたモル君。是非のびのびと育ってほしいものです。
「おいら疲れたよー。二人分の魔法を跳ね返すって結構大変なんだからねー」
「ありがとうございました。すごかったよ」
疲れた様子で席に座りながら不平をこぼすルーマニアにお礼を言う私。それを聞いたルーマニアは満足そうに紅い瞳を細めた。あの一瞬で二つの魔法をカウンターするなんて意外と頼りになるんだな。いつも可愛いと思っていたけど、今日は格好良かったかも。
その後、騒ぎに気づいた女性陣に保護されて魔法対決は幕を下ろしましたとさ。