第3章 北の森【諾】
「ありがとう。ノーレは魔法使いなの?」
「んだべ。怖えけ?」
「ううん、こんなに助けてもらったんだもの。怖くないよ! 私、この森には来ちゃいけないのかと思ってた」
「そうけ。けんど、普通の人間はそれがええ。知らん奴が悪りい妖精に騙されんのは珍しくねえべ。も、この森以外の妖精には不用意に近づくんでねぞ」
ノーレもここの妖精達も皆いい人だった。でも全ての妖精が善い妖精とは限らない。
そのあと私はノーレや妖精達と素敵な時間を過ごした。妖精の歌や踊りはそれは見事だった。途中からは仲間にいれてもらい、私も一緒に歌っていた。
美しい時間は過ぎ去ってしまうのが速い。ポケットに入れていた懐中時計が夕刻を知らせる。
「出口まで案内するべ」
「ありがとう。妖精さん達も、ありがとう!」
《気をつけてね》
《またおいで》
《もうなくさないようにね》
《貴女の歌、素敵だったわ》
妖精達は光りながら森を軽やかに舞い、別れの挨拶をくれた。
ノーレついて行くとしばらくして視界が開けた。明るい昼下がりに、いつもの景色が広がる。
私はもう一度ノーレにお礼を言い、また来ていいか訪ねる。
「いつでも来。妖精達も待っどるけ」
「そうする!」
元気よく返事をするとノーレは微かに笑った気がした。私は軽く手を降って帰路についたのであった。
―――今度はビスケットやチーズを持って北の森を訪ねよう。