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リーガル・ハイ~古美門研介との日常~

第1章 汗と涙で勝ち得たボーナスの行方


 古美門は立ち上がると、右手の人差し指を立てて、まくしたててくる。

「私は有言不実行なところが大嫌いだ。ただ、今の生活で十分に満足しているし、財産もそれなりにある。だから消費税が10%になろうが20%になろうが気にも留めない。電力料金が上がろうと痛くも痒くもない。年金などハナから当てになどしていない。ただキミは下流社会に潜みながら、夢に溢れ、希望に満ちた若者だ。そのパワーがあれば変えられるかもしれん。そう遠くない次の解散総選挙で立候補すればいい」

「立候補しません」

 私は即答する。

「なぜ立候補しない?腸が煮えくり返っているのに、なぜ行動しない?政治家のことを悪く言うのは構わんが、少なくとも学生時代はキミより勉学に勤しみ一流大学に合格している。学歴だけが全てではないと言うが、娯楽から身を遠ざけて、寝る間も惜しんで机にかじりついている時間の分だけ、上にいるのだよ。数え切れないほどの人間に頭を下げて資金やコネをつくってるのだろう。愚痴をこぼすのは自由だが、愚痴を愚痴で終わらすほど虚しいことはないんだ。今の自分の立っている位置。それはそれ相応の生き方ゆえの場所ではないのか?確かに生まれた環境や突然の不幸な出来事もあるだろうが、それを恨んだり妬んだりするのは筋違いも甚だしい。何かを変えようとするなら、確固たる決意を持って行動することのみが自らの道を切り開くのだ」

「立候補できません。今の私にはお金もコネもないですから……違う方法で世の中を変えていきます」

 そう、政治家ではなく弁護士として目の前で苦しんでいる人を助けたいのだから。

「具体性のない、ただの夢物語だ。まあ、キミの生き方は自由だ。私の邪魔さえしてくれなければ何ら問題はない。死なない程度に働いてくれたまえ。ところでボーナスは何に使う予定なんだ?」

「将来のために貯金しようかなって」

 古美門への借金返済に充てるなど、死んでも口にしない。
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