第1章 孤独
「真桜ちゃん」
祖母が私を呼び、おいでと手招きしていた。
今日までしか面倒見れなくてごめんねと祖母はいうが、本当は早く家から出て行ってほしいと思っているんだろう。
真桜は明日から一人暮らしを始める予定だった。
祖母は真桜を玄関に連れて行き、ある一人の男性を紹介した。
「この人は、お父さんの友達の橋本零さん。明日から面倒を見てくれるそうよ」
祖母はうれしそうに話した。
零という男性は、本当に父の友人なのかと疑うほど若かった。
「藤崎真桜です。よろしくお願いします」
自分の名前を名乗ると、零は
「真桜ちゃんね。今日からよろしくね」
そういいながら私に笑顔を向けた。
荷物を持ってきて私は零という怪しい男と一緒に祖母の家を出た。
いつからか私はだれも信用することもできなくなっていた。
生きている価値さえもわからない。
だから、私は急に現れた零に縋り付くしかなかった。
それしかもう道は残されていないように思えた。