第1章 袖口から伝わる温度1【厚 藤四郎】
…あれから何日もたった。
あの、後彼女が笑ったことに俺も、薬研も、乱も驚いていると、彼女は顔を真っ赤にして逃げるように帰っていった。
それから何度も彼女とはすれ違うが、彼女は俺を避けるように俺と目が合うと逃げていった。
その度に乱にはやっぱり顔が怖いだの、薬研には嫌われただの、言われ
その場ではうるせーな!!と一蹴りするものの、やっぱりそうなのかなって思いながら、彼女に声をかけることは出来ずに、急ぎ足で歩いて行く背中をただ、見ていた。
そして、今日も。
何も変わらないと思っていた。
彼女があの時と変わらず、袖をひき、
彼女があの時と変わらず、俯きがちに、
彼女があの時と変わらず、手を強く握って。
ひさしぶりに聞いた鈴の鳴いた音と、
何かを伝えようとするその姿に。
「あの、突然でごめんなさい…っ!!」
…かわいい、と思ってしまった。