第11章 愛してるから、選んでほしい【燭台切光忠】
「また太る…って思ったでしょ、先輩」
「お、思ってないよ」
「ほんとにぃ?」
疑う星さんの顔が、ドンドン近くに寄ってくる。
僕は彼女のぷるぷるの唇に目が行ってしまって、顔に熱が走るのがわかった。
あー、彼女とキスがしたい。
「……ま、光忠先輩優しいからそういう事にしましょう!」
そう思って、彼女の頬に手を添えるとわかってやってるのか、それはわからないけど、スッと顔をひいて僕と距離を取るといつもの笑顔に戻った。
ぼ、僕は今彼女に何をしようと…とか考えたら一瞬ひいてた熱がまた温度を上げる。
恥ずかしくて、恥ずかしくて、僕の手は自然と僕の顔を隠した。
突然しゃがんだ僕に驚いた五十嵐さんが、先輩?先輩?と心配そうに声をかけてくれる。
僕はそれを指の隙間から、こっそりと見ると眉を下げた彼女がいた。
本当に心配をしてくれたんだなぁ、と思う心と同時に僕は彼女の事が好きである事を再確認した。
「…五十嵐さん、好きだよ」
と、小さく呟いた声はどうやら手が遮断をしてしまって聞き取れなかった様子の彼女は、どうしました?大丈夫ですか?と声をかけてくれた。
いっそ、彼女のそのちいさな耳に入ってしまえばよかったのに、と思いながらも僕はこれ以上彼女に心配かけないように、顔から手を離し立ち上がり、
嘘だよ、と笑ってみせた。
よかったぁ、と安心したように笑う彼女と僕は、
また話しながら学校へと歩いて行った。