第1章 袖口から伝わる温度1【厚 藤四郎】
はじめて、君を知ったのは暑い夏の日でした。
「…あの」
「…え」
夏休みもあと残り半分。
登校日と称して、先公の嫌がらせの如く小テストを出されてテンション下がりながら帰路を進む。
一兄ってほんと嫌なとこを出すよなあ、とか。
鶴丸先生は適当だったよね、とか。
幼なじみでクラスメイトの薬研や乱と言い合っていると、
突然裾を引っ張り俺を呼び止める声が聞こえた。
「…あ、あの」
「なに?厚の知り合いか?」
「え、僕聞いてないんだけど!!!」
その声に振り返ると、白いワンピースを着た背の低い女の子。
中々要件を言い出さないその子はただ、俺の袖を掴んでもぞもぞしながら口ごもる。
俺は誰だ、こいつとか思いながらただその子が口を開くのを待っていると、
茶々を入れてくるバカ二人。
小声で知らねーよ、と呟きながらちっこいのを見ていた。
「もしもーし…?」
「…っ」
「あのー……え?」
一向に喋りださないそいつにちょっと苛々しながらもおかしいな、と思って声をかける。
すると、なんだか口篭った息を飲む声が聞こえるだけ。
突然具合でも悪くなったのだろうかと、しゃがんで顔を覗き込もうとすると
それに気づいた彼女の手が俺の裾から離れ、顔へと行った。
「ちょっとー…、厚の顔が怖くて泣いちゃったじゃん」
「俺、なんもしてねえし!!」
明らかに泣いてるそいつは、必死にそれを隠そうと目元を手で擦るも出てくるソレは留まることを知らずに、擦っては広がっていくだけだった。
そんな姿に見かねた乱が持っていたハンカチと共に、彼女を宥めながら、嫌な目線をこちらに向けてきた。
だいじょうぶだよー、怖くないよーとか子供をあやすみたいに声をかける乱に、俺はどうしていいかわからずただ、その光景を見ているとポンッと方に手が置かれる。
「厚」
「なんだよ…!!」
「彼女の手、ほら、反対の」
薬研に導かれるまま、目線をさっきまで俺を掴んでいた反対の手ににやるとそこは強く強く握りられていて
。
力を入れすぎているのか、少し赤くなっていた。
でも、俺にはそれだけにしかわからなくて、疑問符だけが頭に乱立するも、
何故か全て状況を把握している薬研はため息をつきながら、彼女の目線に合うようにしゃがんだ。