第3章 貴方を思う月夜の下で。【小狐丸】
「主様、今宵の宴も楽しかったですね」
「そうだねぇ」
月の明かりがキラキラ、と。
彼の同じ色した髪を照らしていく。
膝の上に乗る彼の髪を優しくなで、ただぼぅ…と月を見る。
背中の向こうではまだドンチャン騒ぎが燻っている。
「主様」
「ん?」
「わたしはこの刻が止まってしまえば…と思うのです」
「ええ、そうね」
冷たい風がひとつ、吹く。
木の葉のカサカサ揺れる音がなんとも心地良い。
宴の時の賑やかな雰囲気も好きだけれど、こうした宴の後の静かな時も好きだった。
…それは彼も同じなようで。
時折、猫みたいに私の撫でる手にじゃれつきながら小狐丸も目を細める。
「本当に綺麗」
「ええ、主様」
大きな月の縁をなぞる。
冷たいけれど、優しいその光に魅せられる。
小狐丸、そう呟いた声も風に盗まれ、
折れた貴方の刃を撫で、
チリンと一つ、鈴の音がなる。
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短い話が書きたかったので。
愛も変わらず雰囲気だけでどうぞ。