第3章 青空と君
私は断ろうと思ったけど、心配をかけさせてしまったので断りにくく、平助君の布団にもぐりこんだ。
それからしばらく沈黙が続いたので、私は平助君の手に少しだけ触れて小さな声で言った。
「平助君、ごめんね?心配かけさせちゃって・・・」
「いいよ。これからはちゃんと休めよ。」
「うん。分かったよ。」
そして私はずっとしてみたかった質問をしてみた。
「ねえ、平助君。平助君はさ、今、したいことってある?」
「したいことか・・・。そうだな、青空が見たいかな。」
私は予想をしていなかった答えに首をかしげる。
平助君はそんな私を見つめながら優しく微笑んで言葉をつなげた。
「俺が起きてる時間って、真っ黒な空だろ。別に嫌いじゃないけど、しばらく見なかったら普通の青空が見たいって思うよな。ま、無理なのは分かってるんだけど。」
そういって自虐的に笑う平助君の顔が私は見ていられなくて、私は気がつけば体を起こして平助君の手を強く握っていた。
「大丈夫。大丈夫だよ。平助君は見れるよ。綺麗な青空。私が、見せてあげる。」
私が言うと、平助君は大きな声で笑った。
「あははっ!!私が見せるって・・・・。そんなこと、ありえないって分かってるけど、お前に言われると叶いそうだな。んじゃ、俺はそれまで、一生懸命生きるしかないな。」
そう言って笑った平助君の顔は、さっきまでと違ってとても晴れやかな笑顔だった・・・・
今、私と平助君は私の故郷で暮らしている。いろんな出来事があって、すごく大変なこともあったけど、私たちは今、すごく幸せだ。
私は隣でお日様の光を浴びている平助君に話しかけた。
「平助君。私が言ったこと覚えてる?私がいつか、平助君に青空を見せるっていったこと。」
「ああ、覚えてるよ。忘れるわけないだろ。」
「私、見せてあげることできたよね。綺麗な青空。」
「あたりまえだろ。ありがとう。千鶴。今度は俺がお前に誓ってやるよ。これから、俺が毎日、この空を見せ続けてやる。ずっと、ずっとな。」
そういった平助君の顔は、あの時と同じ、とても晴れやかな笑顔だった。