【黒子のバスケ】それはいっそ悪夢のよう【緑間真太郎】
第3章 日常の終わりは目の前まで訪れていた
8月25日
この日は昨日の雨の影響で湿度が高く、茹だるような暑さだった
IHの出場を逃した我が秀徳高校男子バスケ部は既に冬に行われるWCに照準を合わせ、夏休みもほぼ全てを過酷な練習に費やしていた
今日もいつも通り1日中練習で体育館では室内だというのに部員達の熱気で息苦しく不快感極まりない
俺は頬から止めどなく流れ落ちる汗を着ていたシャツの袖口で乱雑に拭った
ふと何気無く体育館の外に目を向けると見慣れた黒髪の男が地面に蹲まっているのが見えた
…またか
俺、緑間真太郎と同じく1年にしてスタメンの座を奪い取った高尾和成
煩いので本人に言うつもりはないが俺の相棒である
彼奴は中学時代のチームメイトであった黒子程ではないが、過酷な練習に耐えきれずああやって体育館の外で嘔吐する事がある
「全く、また自分の限界を無視するとは」
俺はそう独りごちると床に転がっていた彼奴のボトルを拾い、高尾の元へ向かう事にした
しかし、高尾の元まで辿り着く前に視界の端から彼奴に向かって走り寄る1人の少女を捉え、思わず足を止めてしまった
『高尾ー!大丈夫か?ほら水持ってきたから口ゆすげよ』
「うーあんがと…城ちゃん…」
漆黒の艶やかな長い髪を高い位置で1つに結わえた少女、要城月
秀徳高校男子バスケ部マネージャーで俺と高尾のクラスメートでもある
そんな要は高尾の横にしゃがみ込むと優しくヤツの背中を摩る
高尾も要に向かって力なく微笑みかけた
チクッ…
何故か2人を見ているとイライラするのだよ
俺は早足で2人の背後まで歩み寄ると2人に聞こえる様に盛大に溜息を吐いた
「全く、情けないにも程があるのだよ高尾」
「真ちゃん?」
『緑間…』
俺の言葉に要は睨む様にこちらを振り返る
『お前、相棒にその言葉は無いだろ!』
「ふん、人事を尽くしていないからだ。お前もマネージャーなら1人に掛り切りでは無くもっと周りに気を配れ」
要を見ると言い様のないイライラが募りつい思ってもいない事をつらつらと言葉にしてしまう
『んだとオラァ!』
「ちょっと、真ちゃんも城ちゃんも落ち着いて!」
売り言葉に買い言葉
両者一歩も引かずに睨み合い言い合いが続く
そんな俺と要を慌てて止めに入る高尾