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俺らのマネは地味子さん。

第14章 ELEVEN







「地味子さんね、俺らにまで挨拶周りするんだよ。
俺ら古株だけじゃなくて、会場設置するバイトにもさ。
だからかな、メンバーの気持ちよくわかるんだ。
って!泣かないでね、さっきこの話した子泣いちゃってさー」


まさか、こんな所でこんな話を聞くとは思わなかった。
思わず俯く私を見て、オロオロと慌てる新井山さん。


「大丈夫です。
ありがとう、ございます」


何とか顔を上げる。

夜で良かった。
昼間ならバレてしまうだろう。


「うん、ほら、タクシー来たよ。
ゆっくり休んでね」


私は見送られタクシーに乗り込んだ。





「お客さん、どこまで?」

「・・・」


聞かなきゃ良かった。
だって、こんなに弱くなってしまう。

バレない様にするのが精一杯。

ダメだ。
泣いたらダメだ。

必死に振り絞り、私は口を開いた。

彼らが待っているホテルの名を口にする。


スムーズに走り始めるタクシー。

緩む視界。
必死に瞳を開き、堪える。

まだ、泣かない。
泣くわけにはいかない。

まだ、何も終わってないんだ。


これからの事。
今から起こり得る事態の事。


ちゃんと伝えなければいけない。
自分の言葉でちゃんと・・

あの破天荒なバカで、でも素敵な彼らの気持ちにちゃんと答えなければいけない。





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