第12章 NINE
ー山田sideー
「社長との話はどうでしたか?」
「山田さん・・どうして・・・」
深夜の事務所。
遅くまで社長と話していたのだろう、疲れた表情を見せていた白元さんが珍しく驚いた表情を見せたと思った瞬間、焦った表情に変わった。
「みんなは?!もしかして何かあったの?!」
「無事に終わってちゃんとホテルへ帰ったと連絡がありましたよ」
俺は、コンサートが始まる前に新幹線に飛び乗った。
年末の新幹線は凄い混み合いで、髪は乱れ、スーツはヨレヨレ、ボタンも何処かに飛んで行ってしまう程だった。
「・・そう、良かった」
心から安堵したのだろう、ほっこり笑う白元さん。
「でも、どうして山田さんが帰って来てるんですか?」
俺も大阪のホテル宿泊予定だった。
「そんな事より、社長との話はどうなりましたか?」
「・・ご心配をかけたみたいですね」
良くて、別のグループへ移動。
悪くて、クビ。
「社長は、私の行動を褒めていました。
副社長は良い顔しませんでしたが、私個人の内容でしたので手回しした事について目を瞑って下さいました」
なるほど・・
事務所的にはテレビ局に借しを作りたくないのも頷ける。
それ以降黙る白元さん。
これ以上は何を聞いても答えられないと返事が返って来るだろう。
俺は、そう思い話題を変えた。
「俺は俺で大変な頼み事をさせられましたよ」
「・・えっ?・・・ハッ!」
聡い白元さんならそれだけで気付いてくれる。
説明する手間が省けて助かる。
「メンバー全員知っています。
俺が知っている事も話しました」
「どうして・・」
「人の口には戸が立てられないって言いますしね。
・・メンバーに頼まれているんです。
31日のコンサートに貴女を連れて来いと」
「31、日・・・」
今年最後のコンサート、そしてカウントダウン中継が入る。
「無理よ」
キッパリ言い切る白元さん。
予想はついていた。
でも、諦める気にはなれない。
何よりメンバーに頼まれたのだ。