第8章 お茶をどうぞ、お嬢様〜執事松〜
静寂を破ったのはカラ松だった。
「だから、そ、その…、そんな風に誘うような目つきで見られると、執事という名の殻を脱いでしまいそうになる…」
なに言ってんだこの人、と言おうとしたら人差し指を唇に押し当てられた。
「いいかいカラ松ガール?オレと約束してくれ」
上目遣いで頷くと、指は名残惜しそうに唇をなぞり離れていく。
離れた手が私の顔の横に置かれ、ソファのスプリングが小さな悲鳴を上げた。
「これからはむやみやたらに主アイズを使ってはいけない。それは本当に大切な時に取っておくんだ。オーケー?」
「主アイズってなに?大切な時って?」
ふざけてるのかと思ったけど、カラ松の表情を見ればその考えは打ち消された。それくらい、とても真っ直ぐな瞳だった。
「あぁそうだな、例えば、恋の歯車が回りだ…………」
カラ松は何かとてつもなくイタイ台詞を言いかけたかと思うと、ハッとした顔になりみるみる頬を紅潮させた。