第8章 お茶をどうぞ、お嬢様〜執事松〜
勉強を始めてもうすぐ長い針が一回り。
何度も赤で訂正された問題とにらめっこ。
「出来た!これでどう?」
ドキドキしながらノートを見せる。
カラ松は顎に手を当てながらノートに目を通すと、
「フッ、上出来だ」
赤マルでも花マルでもなく、何故か薔薇を書いた。
「なにこれ?合ってるってこと?」
「ああ!主イズワンダフル!主イズビューティフル!これでもう追試という悪魔は追ってこないさ!」
「やったぁーーー!!」
両手を挙げてバンザイする私を見て、カラ松は嬉しそうに微笑んでいる。無駄に上手な薔薇を抱きしめ、私も満面の笑みを返した。
「ありがとうカラ松!」
「お嬢様の力になれたなら何よりさ」
手を差し出されたので、再び握手。
「ええ。イタくてどうしようもないダメダメ人間の代表だと思ってたけど、意外と役に立つんですね!」
「え」
生気を失った目のカラ松をスルーし、るんるん気分で立ち上がる。
「では、この後は他の者に教えてもらうので」
テーブルの端に置いていた化学の教科書に手を伸ばす——と、同じタイミングで立ち上がったカラ松と肩がぶつかってしまった。
「きゃっ」
「オゥフッ!ミステイク!」
バランスを崩し2人でソファーに倒れ込む。