第4章 With Luca(ルカ)
執務室を出たレイの目に飛び込んできたのは、意外な人物だった。
「ボス、仕事ははかどった?」
「セス…?何やってんだこんな時間に。」
レイの質問に、一瞬止まったセスだったが、すぐにいつものオネエスマイルに戻った。
「…お祓いよ。」
「は?」
「フェンリルがお化けがここら辺に出て、眠れないって言うから、心優しいアタシがゴーストバスターしてやってんのよ!」
「はぁ…」
早口で捲し立てられて、生返事しかできないレイだったが、どうも様子がおかしい。
「終わったらさっさと寝ろよ。」
「ラジャー⭐︎…って待って!そっちはダメよ‼︎」
セスに一言告げて、自分の部屋に向かってそそくさと歩み出したレイに、セスが慌てて叫んだ。
「今いいところなんだから…じゃなくて、除霊中なのよ!そっちはダメ!」
「…んなこと言っても、俺の部屋はあっちなんだけど。」
「だから今はダメなのよ!今夜は別の部屋で寝て頂戴!」
「別の部屋って…」
「このセス姉さんの部屋とかね⭐︎」
「遠慮しとく。」
茶目っ気たっぷりにセスが言ったのを、レイがバッサリ斬ると、セスが項垂れるのも束の間、レイは『除霊中』らしい廊下をズンズン進んでいく。
「ちょっ…待ちなさいよ!」
「アリス 待たせてんだよ。」
セスの方を振り返らずに、レイは大股で歩いて、やがて視界から消えた。
暗い廊下にポツンと残ったセスは、闇に向かって呟く。
「…私は頑張ったわよ、ルカ。本当にもう、どうなっても知らないんだから。」