第2章 With Ray(レイ)
「籠絡、ね...」
もう日が傾いた黒の兵舎で、執務室の椅子に深く腰掛けたレイは天井をぼうっと見ながらポツリと呟いた。
「んー?どうした相棒?」
近くに座って本を読んでいたフェンリルが、長く親交のある友の独り言に反応した。
「いや、別に。ただ、なんて言うか、そんな手を取るのかって思って...」
軽く顎をさすったレイは、物思いに耽るようにまた天井に目をやる。
「...。何、相棒は気に入らねーの?」
「そうじゃない。ただ不思議に思っただけだ。」
ニヤリと口角を釣り上げたフェンリルの声色が、からかいを帯び初めて、レイは急いで否定する。
「照れるなって。嫌なんだろ?」
「なんでそうなる」
身を乗り出したフェンリルは面白そうに言う。これ以上調子に乗られてはたまらないと、レイは素っ気なく答えてみるが、フェンリルは反省する気などゼロである。